場所の魂
NICU閉鎖後しばらくは、朝の小児科カンファレンスをその跡地で行っていた。改装工事が始まると他所へ移らざるを得なくなった。自然と足も遠のいていたが、ときおり工事の合間を見て立ち寄ってみることはあった。誰もいなくなった旧NICUから(この部屋に誰もいないということ自体、稼働中にはあり得ない事態であったのだ)、使われなくなった保育器や新生児用人工呼吸器が減っていった。次第にその場所がNICUでなくなっていく感があった。
場所にも魂というものがあるのだなと思った。永年過ごしたその部屋から、NICUの魂が次第に抜けていくという印象であった。自分たちはNICUを失ったのだという事実が、それとともに重く現実になっていくような気がした。
昨朝入ってみると、新しい用途のための備品が運び入れられて、すっかり様変わりしていた。事務デスク上に子どもの手作りのセロハンテープホルダーが乗せられていた。誰か職員の子女が学校の授業で作ったのだろう。売り物にするには拙い木工細工で、表面にトランペットの絵が描かれていた。他の何よりもこの文具に、新たな魂がこの場所に入ったことを決定的に思い知らされた気がした。もはやここは私の場所ではないと思った。